難しく感じますが、これが薪乾燥の本質ではないかと考えています。
森で伐採された薪を「那須の薪」で玉切りにする時の含水量が58%前後です。
それを玉切りにして薪割り直後は、45%前後の含水量となります。その後3日ほどすると含水量は35%前後でしばらくの間、推移するようになります。
ここからです。
水には、「結合水」と「自由水」があるそうです。伐採された原木に含まれている水は、「結合水」です。結合水は、たんぱく質や炭水化物と水素結合していて分子が自由に動き回ることができません。
そのため、「結合水」は0℃でも凍結せず、高温でも気化し難く、微生物も利用できません。つまり、この「結合水」を減らさなければ、薪は燃えないということですね。
これに対して、「自由水」は分子が自由に動き回れるので0℃で凍結したり、100℃付近で気化したり、物質を溶解させることのできる水のことで、微生物が利用できるのはこの「自由水」ということになります。
もうお判りでしょうか。
薪の乾燥には、「結合水」を早めに減らし、薪を気化しやすいように「自由水」の割合を増やすこと。そして「結合水」が抜けなければ、薪の含水量が35%~40%でしばらく推移する間に、カビやキノコが生えてくるということ。
「結合水」にカビやキノコの物質溶解が始まる前に、雨で「結合水」を流したり、10月末から1月末の樹木の水分が根に降りて水分の少ないうちに伐採すること、そして風通しをよくして初期の乾燥を早めることによって、薪の負の要因を回避できるのではないでしょうか。
昔の人が、山で伐採した木材を川を使って下流に運ぶのは、伐採した木が重く運搬手段がないからだと思っていましたが、これは木材の「結合水」を抜くためのものでもあったんですね。昔の人は、木の特性を知りつくしていた。
では、どのように薪を作っていけば良いのか?
先に述べたとおり伐採後の木材は、割ることで一定の含水量まで減少するため、期間を置かず使用する薪の状態まで割ります。
この段階で含水量の減少が止まるのは、「結合水」の影響であると考えられるため、雨ざらし野積みにすることより「結合水」を流出させる。このことは、野積みした薪を集める時に、薪の下にぬるぬるした液体(結合水)が存在することで証明できます。
そして野積みの時期です。
カビの発生が止まる10℃以下で、キノコが生育にくい湿度80%以下の条件が連日続く時期、つまり地域による変動はありますが11月下旬~翌3月下旬ごろ。
この時期に雨ざらし野積みを実施すると「結合水」による薪への瑕疵を最小限に抑えられることになります。
また、このような薪を製作した証として、年輪部分にある導管が開き、薪内部への空気流入口ができて乾燥が進みます。さらに乾燥期間をとるほどに、乾燥風化と微生物(好気性)の働きで導管内部の分解を促進して、導管から薪全体におよぶ乾燥が一層すすむというロジックではないでしょうか。
つまり、薪が乾燥する。如いてはこの導管を通って、薪内部から気化した燃焼ガスが噴き出し、火力が上がることになります。
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